不動産を取得すると税金がかかる?不動産取得税について徹底解説

不動産を取得するにもいろいろな税金や諸経費がかかります。

不動産売買であれば、仲介業者への仲介手数料、登記費用、銀行の手数料等、贈与であれば、贈与税。

不動産を取得して忘れたころに不動産取得税の納付書が届きます。

不動産取得税も考慮したうえで、不動産を取得することを検討した方が良いかもしれません。

本稿では不動産取得税について詳しく解説します。

不動産取得税とは

不動産取得税は不動産を取得した事実に対して課税される地方税です。(地方税法第73条~)

不動産を取得した際に一度だけ納める必要があります。

不動産の登記をしていなくとも実体法上の所有権を取得することによって、不動産を取得した方(個人、法人を問わない)に対し課税されます。
そのため、所有権でない地上権や賃借権、地役権等を取得、設定した場合にはかかりません

地方税法で不動産取得税の標準税率が定められています。(地方税法第73条の15)

標準税率とは、必要があれば地方自治体の条例によって、地方税に定められている税率を適用しなくてもよいという税率です。

もっとも、地方自治体によって一定の特殊な要件を満たすことによって税率が減税、免税されることはありますが、不動産取得税の税率が増税されているケースはありません。(2019年2月現在)

そのため、基本的には全国同一の税率で計算した金額が最大かかると思って差支えないでしょう。

本稿では全国同一の税率や特例措置を解説するにとどめ、減税、免税の要件を満たすかについては、各地方自治体に各自ご確認していただけますと幸いです。

所有権を取得する場合とは

実体法上の所有権を取得する場合とは、大別すると原始取得の場合と承継取得の場合に分かれます。

原始取得の場合

『新築』、『増築』、『改築』や『時効取得』を原因として取得する場合、不動産取得税が課税されます。

地方自治体は基本的に不動産登記記録から不動産取得税の通知等の事務手続きをしています。

原始取得の場合で未登記の場合には、不動産登記記録から不動産を取得した事実がわからないため、地方自治体の固定資産の評価の際に判明するようです。

また、未登記建物であっても不動産を取得した際には申告する義務があります。

そのため、登記をしてないからといって不動産を取得した事実が地方自治体に判明しないというわけではありませんのでご注意を。

承継取得の場合

『売買』、『贈与』、『交換』等を代表とする承継取得も原則として不動産取得税が課税されます。

ただし、相続によって取得した場合には課税されません。これは『遺産分割』を登記原因として取得した場合にも同様です。

ただし、『遺贈』を登記原因とする場合には、不動産取得税がかかる場合とかからない場合があります。

遺贈には二種類あり、『包括遺贈』と『特定遺贈』があります。

包括遺贈は被相続人の財産を包括的に遺贈することを指します。
被相続人の財産を不動産だけでなく、現金、預金、株式、債権等を包括的に取得する場合は包括承継であり、相続によって取得する場合と変わらないためです。

特定遺贈は被相続人の財産である不動産(一部でも可)を取得する場合です。
これは実質的には不動産だけの贈与(特定承継)を受けていることと同視できるためでしょう。

計算方法

取得した不動産の価格(課税標準額)×税率=税額となります。

税率については、以下のとおりです。

取得日 全ての土地・家屋(住宅のみ) 住宅以外の家屋(非住宅)
2008年4月1日から 2021年 3月31日まで 3% 4%

もっともいくつか特例措置があります。

ここからは具体的な資料をもとに解説します。

取得した不動産の価格

不動産を取得した際の固定資産課税台帳に登録されている価格(固定資産税評価額)になります。

この固定資産税評価額(評価額)は不動産取得税及び登録免許税を算出する際の基準となる価格になります。

※固定資産税・都市計画税については『課税標準額』を基準に算出します。

固定資産税評価額については、毎年6月頃に不動産の所有者に対して通知される固定資産税・都市計画税の納税通知書(課税明細書)や、固定資産評価証明書や固定資産関係証明書(都道府県によって呼名は異なります)に記載されております。

具体例

上の画像は固定資産関係証明書(東京都の場合)です。

赤枠で囲んでいる『価格』の金額が不動産取得税の計算の元となる価格です。

この計算の元となる価格から

1.1,000未満を切り捨て
2.切り捨て後の価格に3%(4%)の税率をかける
3.計算後の価格に100円未満があれば切り捨て

最後に出てきた価格が実際に納税する不動産取得税となります。(土地と建物は別々に計算)

宅地等を取得した場合の課税標準額の特例

固定資産税評価額×2分の1⇒1,000円未満切り捨て=課税標準額となります。※ただし、2021年3月31日までの特例措置となります。

宅地等とは、登記簿上宅地であるか、現況が宅地であって都道府県に宅地評価された土地をいいます。

下記登記簿の画像となります。

画像の赤枠記載ように登記簿上の地目が『宅地』となっていれば、登記簿上宅地であり、特例の要件を満たします。

上記不動産の価格であれば、103,202,380円が土地の価格となり、上記に2分の1を乗じた金額から1000円未満切り捨てした価格が、土地の課税標準額となります。
※もっとも上記関係証明書は、敷地権付区分建物(マンション)の関係証明書ですので、計算式は敷地権割合を乗じた金額が課税標準額となります。

登記簿上の地目が宅地でなくても、上記の画像赤枠の箇所のように関係証明書の『現況地目』が宅地となっていれば、同様に特例措置の要件を満たします。

物件の築年数や取得方法によって異なる

上記は原則となりますが、売買によって取得した場合や、築年数によっては、不動産取得税を計算するうえで一定額の控除があります。

新築の場合

要件を満たすと、建物及びその敷地につきそれぞれ一定額控除されます。

建物 不動産取得税 (固定資産税評価額-1,200万円 ⇒ 1,000未満切り捨て)×3%
軽減の要件 ・住宅であれば全般に適用
(マイホーム以外でも投資用賃貸マンション(居住用限定)やセカンドハウスでも可。家屋の増築・改築でも他の要件を満たせばOK)
・現況床面積が50㎡以上(一戸建以外の住宅(マンション等)であって貸家であれば40㎡以上)240㎡以下
※現況床面積とは登記簿上の面積ではなく課税されている床面積になります。(固定資産関係証明書上の現況床面積)
土地(宅地) 不動産取得税 (固定資産税評価額×2分の1 ⇒ 1,000円未満切り捨て×3%)- 下記いずれか高い方の金額が税額から軽減
・ 45,000円(税額が45,000円未満である場合はその額)
・(土地1㎡当たりの固定資産税評価額×2分の1)× 現況床面積×2(200㎡が限度 × 住宅の取得持分)× 3%
軽減の要件 上記建物の軽減の要件を全て満たしていること(ただし、増築・改築の場合は土地取得の軽減措置を受けれません)
土地を先に取得する場合には、取得後3年以内(2021年3月31日までの特例)にその土地の上に住宅が新築されていること
(ただし、土地を取得したものが建物新築まで土地を所有している場合若しくは土地を取得したものから更に土地を取得したものが建物を新築する場合に限ります)
土地を借りて建物を新築する場合には、住宅を新築した方が、新築後1年以内にその敷地を取得していること。
(建売住宅の場合には、新築後1年以内(同時取得を含む。)に土地を借りた方が取得していること。)
認定長期優良住宅の新築の場合

固定資産税評価額から控除出来る額が1,200万円ではなく、1,300万円となります。(2020年3月31日までの間に取得した場合に限る)

中古の場合

中古の場合も同様に、一定の要件を満たすことによって建物及びその敷地につきそれぞれ一定額控除することが可能です。

建物 不動産取得税 (固定資産税評価額 - 下記控除額のいずれか ⇒ 1,000円未満切り捨て)× 3%

新築日(固定資産課税台帳記載の新築日※基本的には登記簿上の築年月日と同一) 控除額
昭和29年(1954年)7月1日~昭和38年(1963年)12月31日 100万円
昭和39年(1964年)1月1日~昭和47年(1972年)12月31日 150万円
昭和48年(1973年)1月1日~昭和50年(1975年)12月31日 230万円
昭和51年(1976年)1月1日~昭和56年(1981年) 6月30日 350万円
昭和56年(1981年)7月1日~昭和60年(1985年) 6月30日 420万円
昭和60年(1985年)7月1日~平成元年(1989年) 3月31日 450万円
平成元年(1989年)4月1日~平成 9年(1997年) 3月31日 1,000万円
平成9年(1997年)4月1日以後 1,200万円
軽減の要件 個人が自己の居住用に取得した住宅であること
50㎡以上240㎡以下(現況床面積)
・下記いずれかの要件を満たしていること
① 昭和57年1月1日以後に新築されたもの
➁ 昭和56年12月31日以前に新築された建物であって、建築士等が行う耐震診断によって新耐震基準に適合していることの証明がされたもの既存住宅売買瑕疵保険に加入しているものであること
土地 不動産取得税 (固定資産税評価額×2分の1 ⇒ 1,000円未満切り捨て × 3%)- 下記いずれか高い方の金額が税額から軽減
・ 45,000円(税額が45,000円未満である場合はその額)
・(土地1㎡当たりの固定資産税評価額×2分の1)× 現況床面積×2(200㎡が限度 × 住宅の取得持分)× 3%
軽減の要件 ・建物より先に土地を取得した場合には、土地を取得した方が、土地を取得した日から1年以内(同時取得を含む。)にその土地の上にある建物を取得していること。
・土地より先に建物を取得した場合には、建物を取得した方が、建物の取得後1年以内にその敷地(土地)を取得していること。
耐震基準に適合しない住宅の場合

耐震基準に適合しない住宅(昭和56年以前に建てられた古い建物)であっても、下記要件を全て満たした場合には、建物の不動産取得税額から一定額控除されます。

要件 個人の取得であること
50㎡以上240㎡以下(現況床面積)
取得後6か月以内に所定の耐震改修工事を行い、耐震改修工事後の建物につき、耐震基準適合の証明がなされ、耐震改修工事後に取得者が当該建物に居住すること
減税額 中古住宅が新築された日に応じて、算出後の不動産取得税額から減額されます。

新築日(固定資産課税台帳記載の新築日※基本的には登記簿上の築年月日と同一) 減税額
昭和29年(1954年)7月1日~昭和38年(1963年)12月31日 30,000円
昭和39年(1964年)1月1日~昭和47年(1972年)12月31日 45,000円
昭和48年(1973年)1月1日~昭和50年(1975年)12月31日 69,000円
昭和51年(1976年)1月1日~昭和56年(1981)6月30日 105,000円
昭和56年(1981)7月1日~昭和56年(1981年)12月31日 126,000円

例えば昭和48年(1973年)1月1日の要件を満たした古い建物を取得した場合で、建物の不動産取得税を計算した結果80,000円だった場合、そこから69,000円がひかれ、納める不動産取得税額が11,000円となります。

不動産取得税がかからない場合もある

不動産取得税を課税することになじまないケース等、一定の場合には不動産取得税がかかりません。

国等に対する不動産取得税の非課税

国、非課税独立行政法人、国立大学法人等、日本年金機構、都道府県、市町村、特別区、地方公共団体の組合、財産区、合併特例区、地方独立行政法人が不動産を取得する場合には不動産取得税はかかりません

用途による不動産取得税の非課税

・宗教法人が専ら本来の用に供する境内建物及び境内地を取得する場合には不動産取得税はかかりません
・学校法人が一定の用途で使用する不動産を取得する場合には不動産取得税はかかりません

等非営利法人等が、特殊なケースで事業の用途で取得する場合には不動産取得税がかからない規定が設けられています。(地方税法第73条の4)

換地の取得等に対する不動産取得税の非課税

換地の取得等であって一定の要件を満たす場合には、不動産取得税はかかりません

形式的な所有権の移転

形式的に所有権を取得した場合には、不動産取得税はかかりません。
下記代表例になります。

相続
合併
法人の現物出資
共有物分割
委託者から受託者への不動産の信託
・自益信託の場合であって一定の要件を満たす場合の、受託者から委託者兼受益者に信託財産を移す場合における不動産の取得
・区分所有建物を取得する場合の共用部分の取得
・譲渡担保権設定後二年以内に、譲渡担保権者(債権者)から譲渡担保権設定者(債務者)に対して譲渡担保財産を移転する場合

不動産取得税の免税点

課税標準額が次の金額未満の場合は不動産取得税はかかりません。

土地           ⇒ 10万円

建物(新築、増築、改築) ⇒ 23万円

建物(その他売買等)   ⇒ 12万円

ただし、土地若しくは建物を取得した方が、1年以内に土地に隣接する土地または家屋と一構となるべき家屋を取得した場合には、それぞれその前後の土地又は家屋の取得をあわせて一つの土地の取得又は一戸の家屋の取得とみなして、判断します。

小分けにして取得することにより、不動産取得税の課税を回避することをさせないためでしょう。

不動産を取得した場合には申告は必要?

不動産を取得した場合には、各都道府県税事務所に申告が必要です。

地方税法第73条の18
不動産を取得した者は、当該道府県の条例の定めるところによつて、不動産の取得の事実その他不動産取得税の賦課徴収に関し同条例で定める事項を申告し、又は報告しなければならない。

この申告は特例措置の適用を受ける際にも必要になりますが、申告をしていないからといって控除や減税の特例措置を受けれないというわけではなく、実務上無申告の場合には、都道府県税事務所が法務局に不動産取得に関する登記簿謄本や添付書類等(住宅用家屋証明書)を調査したうえで、不動産取得税額を決定しています。

不動産取得税額を決定した場合には、納付書を取得者に対し送付する前に税額を通知するため、その税額に特例措置が適用されていなければ申告可能です。

申告の期限は都道府県によってまちまちですが、不動産を取得してから20日から60日以内に申告義務を課している場合がほとんどです。

ただし、実務上この申告はあまりなされていないため、都道府県税事務所は登記簿や法務局に登記申請した際の添付書類から、不動産取得の事実や税額を算出しております。

納付時期(いつ)

各都道府県によって異なりますが、不動産を取得してから概ね半年後から1年前後で、納税通知書が届きます。

下記人口の多い都道府県税事務所に直接連絡の上、確認しました。(2019年2月)

都道府県 納付書到着時期
東京都 4か月から5ヵ月後(長いと1年位かかる)
神奈川県 半年後
埼玉県 8か月から10か月後
千葉県 半年後
大阪府 4か月から5か月後
愛知県 4か月から5か月後
兵庫県 5か月から6か月後
北海道 おおむね3か月後
福岡県 半年後から1年後

税額決定の通知から大体一か月後に不動産取得税の納付書が届きます。

まとめ

不動産取得税は原則課税されますが、築が浅かったり、床面積が大きめの不動産を取得する場合には、少額だったりかからない場合もあります。

全てを覚えるのは大変ですが、築浅、個人、居住用、ファミリータイプであったら不動産取得税が安くなる(もしくはかからない)と思っていいでしょう。

不動産を取得する機会はあまり多くないと思いますが、不動産取得税についても頭の片隅において不動産の名義変更手続きに臨んでください。

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